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2006年10月11日
会津若松ちんたら紀行(その3)
大内宿は南会津に位置し、参勤交代の際は殿様もここの本陣で休息したという由緒ある宿場町。幕末、会津藩が京都守護職を命じられて出府したときも、藩主の松平容保は生きて帰れぬ覚悟でここに立ち寄ったにちがいない。
いわば会津西街道の要衝に当たる地なのだが、明治になってからは時代の流れから取り残されたように寂れ、その後はまさに陸の孤島のごとくひっそりと村人の暮らしが続けられてきた。
このことが結果として、昔ながらの江戸期の景観をそのまま残すきっかけとなった。旧街道沿いの両側に立ち並ぶ40数軒の家はほとんどが茅葺きで、正真正銘、時代劇のセットにできるかのようなたたずまいなのだ。
事実、NHKの大河ドラマ「新選組!」の中でもイメージカットとして使われていたから、時代劇ではたびたび登場しているのだろう。
この大内宿が脚光をあびたのは、かの有名な民俗学者の宮本常一氏が教え子によって、たまたま教えられたのがきっかけで、この経緯については司馬遼太郎の『街道をゆく・会津のみち』に詳述されている。
その後は、会津地方きっての観光名所として賑わい、景観を残すことで健全な観光地になった例としても知られている。沖縄でいえば竹富島がその例にあたるのだろうが、ともかくもこれからの観光地のあり方を考える上でもまことに貴重な集落でもあるのだ。
「いやあ、実にいい風情です。大内宿の人々はよくぞこの景観を残してくれたものです。ふむふむ」
と、僕は民俗学者になった気分で、偉そうにあごをさすりつつ集落をつぶさに見て歩いたのだが、その実、眼は集落の中ほどにある大和屋という民宿兼料理屋ののぼりに向けられていた。
そののぼりには「会津名物ねぎそば」という文字が染め抜かれている。そう、僕はここの「ねぎそば」を食うためにわざわざここまで足を運んできたのでありますね。
ねぎそばというと、誰しも日本そばの上に大量のねぎをどばっと散らしたものを想像するだろう。でも、そんな小手先を弄した細工だけで名物になれるほど世の中は甘くないのだ。だってそうでしょうが。沖縄そばの上にねぎをふつうの倍量散らしたところで、それが沖縄名物のそばといえますか? 名物と名乗るからには食う者をして「さすが」「なるほど」と唸らせるものでなくてはならない。果たして出てきた「ねぎそば」は誰もが「おお!」と驚嘆するそばであった。
そのそばには丼の上に直径2センチ弱、長さ20センチほどの白ネギが一本のっていて、なんとこのねぎを箸代わりにして食べるそばなのである。
つまり箸で食べるのではなく、ねぎ一本でそばをすすりつつ、なおかつ、そのねぎをかじりつつ食べろというわけでありますな。とはいうものの相手はナマねぎである。辛くて匂いも強いのではないかと思いきやさにあらず。肉質はやわらかくて味も甘く、そのままかじりついてもまったく問題ない。
このへんのところが一般のねぎとは違っている点で、まさにナマ食向きのねぎとしての品種になっているのである。しかも、会津は元々がそばどころ。しっかりとしたコシの強いそばもそれはもう美味でうまいのなんの。しかしこのそば、重大な問題点がある。
ねぎがあまりに美味いので、後先考えずにカミカミしているうちに短くなってしまい、箸としての用を成さなくなってしまうのだ。やってもらえばわかるけれど、5センチ程度にちびったねぎ一本でそばをすするのはまことにもって難しいものがある。
というわけで、この先どうやって食べればよいのだろうという問題にぶつかりながらの「そば食い」になったのだけれど、それはそれで人生哲学的に旅のよき思い出にはなったのであった。
●大内宿
http://www2.aasa.ac.jp/people/kanare/1603.htm
●ねぎそば
http://carlife.carview.co.jp/UserSpot.asp?TownInfoID=24923
いわば会津西街道の要衝に当たる地なのだが、明治になってからは時代の流れから取り残されたように寂れ、その後はまさに陸の孤島のごとくひっそりと村人の暮らしが続けられてきた。
このことが結果として、昔ながらの江戸期の景観をそのまま残すきっかけとなった。旧街道沿いの両側に立ち並ぶ40数軒の家はほとんどが茅葺きで、正真正銘、時代劇のセットにできるかのようなたたずまいなのだ。
事実、NHKの大河ドラマ「新選組!」の中でもイメージカットとして使われていたから、時代劇ではたびたび登場しているのだろう。
この大内宿が脚光をあびたのは、かの有名な民俗学者の宮本常一氏が教え子によって、たまたま教えられたのがきっかけで、この経緯については司馬遼太郎の『街道をゆく・会津のみち』に詳述されている。
その後は、会津地方きっての観光名所として賑わい、景観を残すことで健全な観光地になった例としても知られている。沖縄でいえば竹富島がその例にあたるのだろうが、ともかくもこれからの観光地のあり方を考える上でもまことに貴重な集落でもあるのだ。
「いやあ、実にいい風情です。大内宿の人々はよくぞこの景観を残してくれたものです。ふむふむ」
と、僕は民俗学者になった気分で、偉そうにあごをさすりつつ集落をつぶさに見て歩いたのだが、その実、眼は集落の中ほどにある大和屋という民宿兼料理屋ののぼりに向けられていた。
そののぼりには「会津名物ねぎそば」という文字が染め抜かれている。そう、僕はここの「ねぎそば」を食うためにわざわざここまで足を運んできたのでありますね。
ねぎそばというと、誰しも日本そばの上に大量のねぎをどばっと散らしたものを想像するだろう。でも、そんな小手先を弄した細工だけで名物になれるほど世の中は甘くないのだ。だってそうでしょうが。沖縄そばの上にねぎをふつうの倍量散らしたところで、それが沖縄名物のそばといえますか? 名物と名乗るからには食う者をして「さすが」「なるほど」と唸らせるものでなくてはならない。果たして出てきた「ねぎそば」は誰もが「おお!」と驚嘆するそばであった。
そのそばには丼の上に直径2センチ弱、長さ20センチほどの白ネギが一本のっていて、なんとこのねぎを箸代わりにして食べるそばなのである。
つまり箸で食べるのではなく、ねぎ一本でそばをすすりつつ、なおかつ、そのねぎをかじりつつ食べろというわけでありますな。とはいうものの相手はナマねぎである。辛くて匂いも強いのではないかと思いきやさにあらず。肉質はやわらかくて味も甘く、そのままかじりついてもまったく問題ない。
このへんのところが一般のねぎとは違っている点で、まさにナマ食向きのねぎとしての品種になっているのである。しかも、会津は元々がそばどころ。しっかりとしたコシの強いそばもそれはもう美味でうまいのなんの。しかしこのそば、重大な問題点がある。
ねぎがあまりに美味いので、後先考えずにカミカミしているうちに短くなってしまい、箸としての用を成さなくなってしまうのだ。やってもらえばわかるけれど、5センチ程度にちびったねぎ一本でそばをすするのはまことにもって難しいものがある。
というわけで、この先どうやって食べればよいのだろうという問題にぶつかりながらの「そば食い」になったのだけれど、それはそれで人生哲学的に旅のよき思い出にはなったのであった。
●大内宿
http://www2.aasa.ac.jp/people/kanare/1603.htm
●ねぎそば
http://carlife.carview.co.jp/UserSpot.asp?TownInfoID=24923
Posted by 仲村清司 at 19:27│Comments(17)
この記事へのコメント
父が歴史好き(?)で、もう何年も前、幼い私を親戚に預けてまで母と旅行に行ったのが、確かここだったと思います。
今でもよく話しにでます。
いい所なんですね。
今でもよく話しにでます。
いい所なんですね。
Posted by 恭 at 2006年10月11日 21:48
大内宿まで足を運ぶとはそうとうな歴史通ですね。
日本広しといえども、
ここまで当時の町並みが保存されているところはまずないと思います。
日本広しといえども、
ここまで当時の町並みが保存されているところはまずないと思います。
Posted by 仲村清司 at 2006年10月12日 14:34
10/9~12で沖縄に行ってきました。
そして《沖縄スタイル》で紹介されていたお店に行って来ましたっ!!!
それぞれ違う趣き、そして暖かさが待っていました。
《酒処 はな》で使われていたコースターが気に入って、
探し回って自分へのお土産に買ってきました。
初めての一人旅だったにもかかわらず、
たくさんの方々との出会いがあり、
とても楽しく忘れられない旅となりました。
訪れた4軒のお店の方々、
偶然隣り合わせになりお付き合い下さった方々、
カラカラの皆様、そしてステキなお店を紹介して下さった仲村さん、
皆様に改めて感謝です、本当にありがとうございました。
さぁ、次回の旅行計画を立てましょうねぇ。
そして《沖縄スタイル》で紹介されていたお店に行って来ましたっ!!!
それぞれ違う趣き、そして暖かさが待っていました。
《酒処 はな》で使われていたコースターが気に入って、
探し回って自分へのお土産に買ってきました。
初めての一人旅だったにもかかわらず、
たくさんの方々との出会いがあり、
とても楽しく忘れられない旅となりました。
訪れた4軒のお店の方々、
偶然隣り合わせになりお付き合い下さった方々、
カラカラの皆様、そしてステキなお店を紹介して下さった仲村さん、
皆様に改めて感謝です、本当にありがとうございました。
さぁ、次回の旅行計画を立てましょうねぇ。
Posted by いもあん at 2006年10月12日 20:40
仲村様、ご無沙汰しております。
大内宿のねぎそばですか、おいしそうですね!
会津は何度か旅行していますがそんな風情のある
ところがあるとはうっかり見落としていました。
11月始めの連休に北関東に旅行する予定ですが
(沖縄でなく残念です)
一足伸ばして南東北まで行きねぎそばを味わうぞ!と
さっき思いつきました。
楽しみを増やしていただきありがとうございます。
大内宿のねぎそばですか、おいしそうですね!
会津は何度か旅行していますがそんな風情のある
ところがあるとはうっかり見落としていました。
11月始めの連休に北関東に旅行する予定ですが
(沖縄でなく残念です)
一足伸ばして南東北まで行きねぎそばを味わうぞ!と
さっき思いつきました。
楽しみを増やしていただきありがとうございます。
Posted by おく at 2006年10月12日 23:53
楽しゅうて 箸の葱まで食いにおり やがて尻敷く 大内宿
なーんちゃって!
楽しかったみたいですね。いいなぁ♪
なーんちゃって!
楽しかったみたいですね。いいなぁ♪
Posted by 蓮華草 at 2006年10月13日 00:38
いもあんさま
お疲れさまでしたね。そして誰よりも貴重でディープで人との出会いの多い旅をされましたね。
次回はどこにお連れしようか、いまから楽しみですが、巡ったリピートするのも旅のもうひとつの醍醐味。訪れた店のこと、スタッフのことをいつまでも心のアルバムにして遺していてください。
お疲れさまでしたね。そして誰よりも貴重でディープで人との出会いの多い旅をされましたね。
次回はどこにお連れしようか、いまから楽しみですが、巡ったリピートするのも旅のもうひとつの醍醐味。訪れた店のこと、スタッフのことをいつまでも心のアルバムにして遺していてください。
Posted by 仲村清司 at 2006年10月13日 17:39
おくさま
後悔させない味にして風情ですから、ぜひ、お試しください。
後悔させない味にして風情ですから、ぜひ、お試しください。
Posted by 仲村清司 at 2006年10月13日 17:46
蓮華草さま
なるほど。
ネギ一本 にても使える お箸かな
で、いかがでしょう。
なるほど。
ネギ一本 にても使える お箸かな
で、いかがでしょう。
Posted by 仲村清司 at 2006年10月13日 17:49
へぇ~!!
そんな食べ方をするそばがあるなんて…。
ふと思ったんですけど…
沖縄そばでそんな変り種ってどこかありますか?
そんな食べ方をするそばがあるなんて…。
ふと思ったんですけど…
沖縄そばでそんな変り種ってどこかありますか?
Posted by 沖縄病患者M at 2006年10月14日 12:53
ご無沙汰しています
沖縄スタイルを読んで一生懸命勉強中です。
しばらく高知の実家に帰っていて来てみたら 今度は葱そば旋風ですね。
ちゃんと食べれるんですかね??
私も旅好きで あちこち行きますが あの辺は余程時間に余裕がないと難しいですよね。 でもそのうち きっと行って かの葱そばにトライしてみます。そして葱そばのあとは 風情あるたたずまいの中で物思いにふけってみましょう。
素敵な場所を紹介してくださって ありがとうございました。 これでまた一つ行ってみたい所が増えました。
目下 カラカラへ行くことを計画中です。すぐ近くなのに・・・
沖縄スタイルを読んで一生懸命勉強中です。
しばらく高知の実家に帰っていて来てみたら 今度は葱そば旋風ですね。
ちゃんと食べれるんですかね??
私も旅好きで あちこち行きますが あの辺は余程時間に余裕がないと難しいですよね。 でもそのうち きっと行って かの葱そばにトライしてみます。そして葱そばのあとは 風情あるたたずまいの中で物思いにふけってみましょう。
素敵な場所を紹介してくださって ありがとうございました。 これでまた一つ行ってみたい所が増えました。
目下 カラカラへ行くことを計画中です。すぐ近くなのに・・・
Posted by こばたん at 2006年10月14日 17:12
先日は、突然にお電話をしまして、大変 失礼致しました。まさかご本人が電話に出られるとは夢にも思って 無かったので、驚きと恐縮でいつぱいです。取り敢えず12冊を注文させていただきました。届くのをとても 楽しみにしています。又投稿させて頂きます。
Posted by 花みずき at 2006年10月15日 04:14
沖縄病患者Mさま
沖縄そばで変わり種といえば、せいぜいカレーそばぐらいでしょうか。ところで、カラカラで昼間のみ沖縄そばを始めました。
詳細は次回のブログをごらんあれ。
沖縄そばで変わり種といえば、せいぜいカレーそばぐらいでしょうか。ところで、カラカラで昼間のみ沖縄そばを始めました。
詳細は次回のブログをごらんあれ。
Posted by 仲村清司 at 2006年10月17日 14:26
こばたんさま
ぬゎに。おちかくですか。カラカラは昼間も沖縄そばを始めたので、ぜひお立ち寄りください。
ぬゎに。おちかくですか。カラカラは昼間も沖縄そばを始めたので、ぜひお立ち寄りください。
Posted by 仲村清司 at 2006年10月17日 14:30
花みずきさま
12冊もご購入くださるとは、本当にありがとうございます。
感想などもぜひお寄せください。
12冊もご購入くださるとは、本当にありがとうございます。
感想などもぜひお寄せください。
Posted by 仲村清司 at 2006年10月17日 14:35
で、ネギが5cm以下になって、どのようにお食べになられたのですか?
Posted by ごう at 2006年10月18日 18:10
で、ネギが5cm以下になって、どのようにお食べになられたのですか?
Posted by ごう at 2006年10月18日 18:10
ごうさま
もちろん箸を催促しました。
もちろん箸を催促しました。
Posted by 仲村清司 at 2006年10月18日 18:23
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